日本の皆様、ご心配頂きましてすみません。 私は不安を感じながらも無事に過ごしています。
11/13、アンドラーシュ・シフのコンサートに行きましたので、今日はその事を書きたいと思います。 数日前にシフがシャンゼリゼ劇場に来る事を知り、当日券を求めシャンゼリゼ劇場へ。
事前に調べたところ、開演の1時間前から当日券を販売するそうです。レッスンの後直接向かい、着いたのは開演の1時間20分前。既に列がありました。
階段に座っている人もいたり、これが列なのかよく分かりませんでした。聞いてみると一応並んでいるようなので、少し待ってみると19:00に販売が始まりました。
当日券は€5です。そして、本来なら演奏者が見えないFauteuil de Galerieという この天井に近い席から見るのですが、
今日は3階のどこに座ってもいいですよ。 もし誰か来たら席を移動して下さい。と言われ、この位置から聴く事が出来ました!
シフを€5で聴けるなんて、考えられない。やはり芸術が身近な街です。
シフのバッハの平均律やパルティータのCDは中学生の頃から沢山聴いていて、宝石の様な美しい音にただただ魅せられていました。シフはバロックだけでなくロマン派のレパートリーも沢山あります。中でも私はシューマンの録音が好きです。
今回はシフが指揮とピアノの両方を受け持っていました。プログラムはこちらです。
フェリックス・メンデルスゾーン 序曲「フィンガルの洞窟」op.26 交響曲第3番イ短調「スコットランド」
ロベルト・シューマン ピアノ協奏曲イ短調op.54
序曲が始まると、感動で身体が震えました。 演奏が素晴らしかったのと、何だか圧倒されている自分もいました。 そして、私は1年半以上オーケストラやピアノの演奏会に来ていなかった事を思い出しました。 折角音楽を肌で感じられる環境があるのに、フランスで生活する事に必死な自分もいて、なかなか演奏会に行こうと思わなかったのです。
学生の頃は、月1くらいで一人でよく行っていたのに。やはりいい音楽を聴くと幸せな気持ちになります。つくづく音楽が好きだと思いました。
メンデルスゾーンはドイツロマン派の作曲家。20歳の時に訪れたスコットランドで交響曲3番と序曲「フィンガルの洞窟」を完成させました。
まずスコットランドのヘイブリース島を訪れたメンデルスゾーンはとても感動し、その光景に霊感を受けました。そして何小節かの旋律を、まるでデッサンするかのように一気に書き留めました。最初の何小節かは潮騒、波のうねりを見事なモチーフと共に描写しています。
同じ時にメンデルスゾーンは、エディンバラにあるメアリー・スチュワート(スコットランド女王)の宮殿も訪れました。女王の戴冠式を見たメンデルスゾーンは、交響曲スコットランドの序奏部分を着想したのでした。
シューマンはピアノ協奏曲を作曲する際、今までと何か違った様式を探していました。 ≪Je ne veux pas écrire un concerto pour virtuose. Je dois inventer quelque chose d’autre≫技術を追求するのではなく、ピアノをオーケストラの中の一部とし、メロディーの掛け合いなどがある新たな作品にしました。
ピアノがオーケストラの一部に溶け込んでいるような印象。ピアノも少し古い物を使用していて、まるでシューマンの時代を再現しているかのような素晴らしい演奏でした。
でも、ピアノだけの音も聴きたい。アンコールでシューマンのアラベスクを演奏してくれました。CDでずっと聞いていたあの宝石のような音が目の前で聞けて、感激でした。
≪Ce qui me plaît dans le romantisme, c’est qu’il permet au musicien d’être aussi poète≫
ロマンティズムで好きな事は、音楽家が詩人にもなれる事だ。 Robert Schumann
交響曲にしてもピアノ協奏曲にしても、一つ一つのフレーズがまるで詩のように語られる。誰が聴いても美しいとため息が出る程のシフのピアノとロマンティズムの融合が素晴らしかったです。