Examens de fin d’année /年度末試験

日差しが強いこの頃です。 先週は毎日の様に、音楽院の年度末試験を聴きに行っていました。 エコール・ノルマルは徒歩6分のご近所と言う事もあり、常々行きたいと思っていました。

試験内容は45分程のプログラム、最後は協奏曲をその場で何楽章か指定されていました。と言う事は実際は、試験で弾く以上の曲を準備をしていたと言う事です。

ノルマルの生徒さんは日本人と中国人が沢山いました。真面目にきちんと練習されていて、テクニックは本当にもの凄いのですが、何人か聴かせて頂いた印象としては、日本人は性格上、どこか音楽も遠慮がちな様子でした。外国人の中に入ると遠慮がちに聴こえるというのが、新たな発見でした。

ここは世界中から優秀な方が集まって来る有名な学校なのですが、パリに来たばかりの頃は、この学校の入り口へ続く橋すら渡れなかった自分が、中へ入り試験を聴く程図々しく成長したとは驚きです。

もう、今度にしようとか恥ずかしいとか言ってる場合ではありません。警備員の人に色々質問されましたが、試験は聴講可能と言う事でした。

ピアノの試験は既に終わってしまい、クラヴサン(ドイツ語でチェンバロ)の試験を聴きました。

一番左にあるのは、フランス式の2段の音域が狭いチェンバロ、2段でもう少し音域が広い右のチェンバロではバッハやフランソワ・クープランを演奏し、もっと後の時代になると真ん中の一段のチェンバロと、曲のスタイルや時代によって3つのチェンバロを使い分けています。

バッハのイタリア協奏曲は大型のチェンバロの為に書かれたので、真ん中の楽器で弾くのでしょうか。 途中で鍵盤を動かしていたのは、恐らくピッチを変えていたのだと思います。

古楽では、モダン楽器とピッチが違い少し低くなります。またチェンバロは楽器や歌の伴奏をする事も多いので、その場合はモダン楽器と同じピッチで弾くのだと思われます。

チェンバロの音は本当に繊細でした。通常はピアノ程表現が付けられない楽器ですが、CNSMの生徒さんは凄く表現豊かに演奏していると思いました。何か音を伸ばしたり、和音のアルペジオを弾くタイミングを微妙に変えたりしている気がします。

このように、当時その時代で弾かれていた楽器の音を聴くと、作曲家がイメージしていた音の世界を感じ取る事が出来ます。 そうすると現代の楽器で演奏しても、作曲家毎に音のイメージを変えるという事が可能になりそうです。もっと作曲家に近づく為に古楽の楽器の音を聴きたい。

CNSMの試験では、他にもピアノフォルテやオルガン、それからバロック音楽には欠かせない通奏低音の試験も公開されているので来年は是非聴きに行きたいです!

今回の試験で感じた事は、フランスでヨーロッパの人の演奏を聴くと、テクニックはそれ程でもなくても凄く魅力的、素敵だな。と思う演奏が子供のコンクールでも良くあります。一体自分達と何が違うのか考えてみたのですが、ヨーロッパの人は真面目に練習する以外にも、一流のコンサートや美術館など芸術に触れる機会が日常にあり、表現したい物のイメージがはっきりしているような気がします。 今回のように、よしチェンバロ聴こう!作曲家の家に行こうと思えば割と簡単に行ける訳です。

そして、はっきり自分の意思を伝えるという事は音楽を演奏する上でもとても大切な事だと思うようになりました。 バカンス中は感性を高める為に、色々な所へ図々しく出掛けて行きたいと思います。